- 超音波診断の泌尿器分野への応用は1955年にWildが、PPI方式で直腸内探傷を行い、骨盤内臓器を描出したのが先駆的な試みである。この方法は後に前立腺などの診断に生かされることになる。
また、1961年に、和賀井らが腎腫瘍の疑われた症例を、超音波検査で腎嚢胞と術前診断し、手術で確認した。更に同じ年、J.U.Schlegelは腎結石の手術前にあらかじめ超音波検査を行うと、発見の難しい結石の位置を容易に見出せることを明らかにしている。泌尿器領域で超音波診断への関心が高まるのはこの頃からで、泌尿器独自の取り組みがスタートする。
- その先導役を務めた一人が、当時、順天堂大学泌尿器科の医局に在籍していた大内達男である。大内は1957年に同大を卒業、インターンを経て翌年、泌尿器科に入局した。ちょうど、和賀井を中心とする順天堂大超音波グループの研究が佳境に入っている頃である。
- 前立腺癌はホルモンの依存性が高く、早期発見すれば治療はそう難しくない。ただ、問題は早期診断や鑑別である。当時は、経直腸式の触診が最も簡便で確実な診断法とみなされていた。しかし、それには熟練を要し、しかも客観性に乏しい。大内はより普遍的な診断法として超音波に着目したのである。
□イメージ1
経直腸超音波のため独自に開発したキセル製の特殊探触子(A-モード)
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