- そのころ実用化されていたのはAモード法の超音診断装置である。その応用にあたって大内は、前立腺の解剖学的位置からみて経直腸検査が望ましいと考えた。そのためには、直腸壁面に直角に密着させて超音波ビームを前立腺方向に照射させる必要があり、経直腸用の特殊なキセル型(長さ250mm、直径7mm)の探触子を試作した。
(前ページ左写真)
- これは先端に直角に振動子が内臓されており、棒の軸と直角の方向に5MHzの超音波ビームが照射される仕組みである。実際の検査は、被検者を仰臥位に寝かせ、触診であらかじめ前立腺を確認しておく。その上で探触子を肛門内から挿入、直腸粘膜面から前立腺部に誘導し、前立腺の各部をくまなく探るという方法で行った。
- このAモードによる診断は簡便で安全だったため短期間で多くの症例を重ねることができた。正常例では反射がほとんど見られないか単純なエコーを示すのに対し、前立腺肥大や前立腺がんでは特異な反射波が検出されることを突き止めた。
こうした異常例と臨床診断の一致率はきわめて高く、この結果を1963年の日本超音波医学会第3回研究会で報告し、超音波検査が前立腺疾患の診断に有用であること出席者に印象づけた。
□イメージ2
ラジアル走査法の模式図 
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