このスライドは何故放射性ビームによる治療が理想的な治療であるのかを示唆しています。この画像は甲状腺癌の脊椎骨転移に対して重粒子線治療を行った直後に撮影されたX線CTとPETの合成像で、PETはカラーで表示されています。何故PET像が得られるのか、それは治療に用いられた炭素線のビームがコリメータ等で整形される時に、粒子の一部が核反応で12Cから11Cに壊変するからです。11Cは陽電子崩壊をする核種ですから、12Cの治療ビームとともに標的に到達するとしばらくはその位置にとどまり陽電子崩壊によるγ線を放出します、このγ線がポジトロンカメラで観測されるとスライドのような画像が得られるのです。C11ビームの飛程とC12ビームの飛程はほとんど等しいので、このPET像は重粒子線治療により照射を受けた部位を示していることになります。つまり重粒子線治療の証拠写真なのです。この画像を放医研では自己放射PET画像と命名しています。 51番のスライドで、今後の医療では治療の証拠を保存することが重要になると解説しました。放射性ビームによる自己放射画像はまさに究極の証拠保存であります。 このスライドではPET像の中で明るく染まった部分が照射された領域です。脊髄は暗くこの部分には照射されていないことを示しているのです。
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