以上にお話ししたことは、主として局所治療である放射線治療の精度を高めることで治療成績を向上させる努力とその成果の紹介でした。 高精度の放射線治療を実現するためには、巨大な粒子加速器や、精密照射のためのIMRT装置、PET診断装置等々の高額の装置を必要とします。又こうした機器の取り扱いや情報処理操作のため専門職種の人々の参加が必要になります。 そのような高額の投資を行うことには、大変な困難も予想されます。公平さと国民皆保険を標榜してきた日本の医療の立場からの批判もあるでしょう。しかし癌の治療は日本だけの問題ではなく、全世界の人類の問題です。この講演では難治の癌の治療の最先端であり、希望の星ともいうべき最近の放射線治療の進歩を、日本での諸研究を中心として紹介しました。これらの研究成果を世界の医療として実用化するために、放射線関係の学会や日本癌治療学会等の学会そして、治療医の皆さんと治療を受けたい癌患者の意思がとりまとめられるように希望しています。この際は近視眼的な批判や、足の引っ張り合いのような議論に惑わされないことをのぞみます。歴史を顧みるとラジウムもかつては高嶺の花のような存在でありましたが、ラジウム治療の歴史が癌治療の先達でありました。
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