2019年 JIRA年頭所感


一般社団法人日本画像医療システム工業会
会長  新延 晶雄

 2019年の年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 一般社団法人日本画像医療システム工業会JIRAは、1967年の発足から52年目を迎えました。
 昨年6月にJIRAの新会長に就任して半年が経ちましたが、前会長始め諸先輩が築いて来られました本会の歴史と成果、現在の組織・活動の意義と価値、そして関係各位との連携により寄せられている信頼と期待について改めて敬服しているところです。

 2019年は、東京オリンピック・パラリンピックの大会開催を2020年に控え、また2025年の大阪万国博覧会の開催も決まり、日本が社会課題を解決して明るい未来を築く姿を世界に示す絶好の機会になります。日本の質の高い医療と高度な医療システムを全世界にアピールでき、医療機器産業界としても新たな発展の機会になるものと期待をしています。

 さて日本は、人口構成の急激な変化に伴い、少子高齢化社会から、高齢社会、超高齢社会へと進み、社会構造が大きく変わって行きます。社会保障費の増大や生産者人口の減少など、日本は課題先進国と言われてきましたが、今はこれらの課題解決に向けて総力を上げて実行することが急務です。国は健康寿命の延伸、人生100年時代、働き方改革といったテーマを掲げて、2025年問題に向けて社会保障等の改革を進め、更に団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年を見据えて、より具体的な施策を実行に移していくものと考えます。健康・医療分野では3大疾患(がん、心疾患、脳卒中)に加えて高齢化に伴う生活習慣病や認知症などの早期予防や重症化防止が必須になり、地域包括ケアや在宅医療などに向けた施策の実現も重要になると考えます。こうした中でJIRAは、工業会としての新たな目標を定めて取り組む転換期を迎えています。

 遡ると画像医療システム産業はX線撮影による画像診断装置から始まり、常に医療現場のニーズと向き合って改良改善を重ね、画像のデジタル化を起点としてCT、MRI、核医学等の診断装置、放射線治療装置等のモダリティや、PACS等のシステムで成長し、関連する製品やサービスとともに発展してきました。10年ほど前からは医療ICT推進の取組を重点化し、画像データの標準化(DICOM)、単体ソフトウェアの医療機器化、CADの審査・開発ガイドラインの制定、医療情報の利活用とそれに伴う個人情報保護、サイバーセキュリティへの対応、診療報酬によるイノベーションの評価などの主要な課題に取り組んできました。
 今後の日本社会の課題解決に向けて大きな期待を寄せられているのが人工知能(AI)です。医療分野においても近年の急激なAI技術開発に合わせて、産官学は関連した取り組みの強化を図っています。厚生労働省では「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」の報告書(2017年6月公開)の中でAIの実用化が比較的早いと考えられる領域の一つとして画像診断領域を上げました。その中で民間企業におけるAI開発促進のために、関連学会による画像データベースの構築や、法律上の取り扱いの明確化といった施策を示しています。また放射線医療等の医用画像や医療情報に関連した学術大会では、AI関係のセッションが多くの参加者を集めて主役になっています。産業界では各企業がAI開発に急ピッチで取り組んでいます。特に近年ディープラーニングで飛躍的性能向上を遂げた画像診断支援の技術が、放射線科などの医用画像に対して適用される事が期待され、モダリティやシステムの更なる技術開発と合わせて早期診断・早期治療および低侵襲の医療に貢献し、健康寿命の延伸に寄与するものと考えます。
 更に、画像診断レポートの半自動化によるワークフローの改善や、被ばく線量の管理、装置の保守管理などへAI技術が適用されることにより、働き方改革に繋がる医療現場の効率化や患者様および医療現場の安全安心へ大きく貢献することが期待されます。
 また社会環境の変化への対応力を高めるためにも、サイバーセキュリティ強化に向けた取り組みや、災害等の発生時にも持続して安全安心に利用できる画像診断装置・システムの開発・提供も重要な課題であり、国際展開・国際貢献の視点では国際整合や地域別規制への対応を進めることも必要です。
 JIRAはこういったニーズに応え、技術や製品を医療現場にいち早く提供するために、これまで築いてきた環境・基盤に加えて、更に必要な環境作りに向けた政策や規制への提言を行うとともに、関係される方々に有用な情報の提供・共有を行って参ります。

 JIRAの活動は、2013年に策定されました「JIRA画像医療システム産業ビジョン2020」を基本戦略とし、毎年の活動計画を策定して活動を進めてきました。来る2020年のビジョン実現の集大成に向け、部会活動・委員会活動を会員の皆様と一緒に展開して参ります。また今後は目前に迫っている2025年問題に向け、更には2040年の社会環境の変化も視野にJIRAとしての対応をしっかりと検討していきたいと考えます。

 今後とも会員企業及び関係各位の更なるご理解・ご協力と、ご指導・ご鞭撻をお願い申し上げますとともに、皆様のご健勝とご多幸を祈念して、新年のご挨拶といたします。